【木澤大祐×佐藤貴規】アミノ酸の重要性を語る
【木澤大祐×佐藤貴規】アミノ酸の重要性を語る
佐藤 今回は木澤さんが普段摂っているサプリメントをご紹介いただき、読者の方たちのサプリテーションの参考にしていただこうと思っています。まず、木澤さんと言えば他の選手と比べてもプロテインを大量に摂取しているイメージがあるのですが。
木澤 僕は20代後半から、42歳でジムを始めるまでずっと肉体労働に従事していたので、他の選手のように食事を小分けにして1日に何回も摂ることができませんでした。食事は朝の仕事に行く前と昼休み、そして夜帰宅してからと一般的な1日3食でした。
佐藤 トレーニングをしていない方と同じような、ごく一般的な回数とタイミングだったのですね。
木澤 ええ。だから空腹の時間が長くなるのを避けるために、その間をサプリメント、中でも一番手っ取り早いプロテインで埋めていました。当時は1時間に1回かそれ以上、喉が渇けば水の代わりにプロテインという頻度で、1日分のプロテインをディズニーランドの巨大なポップコーンバケットに入れて飲んでいました(笑)。量としては1日300gくらいかな。
佐藤 運動や身体づくりをしている人は体重×2g、ハードトレーニングをして、ある程度筋量もあるなら×3gが一般的とされていますが、木澤さんの場合は×4~5gとかなり多めだったんですね。ご自身のジム、ジュラシックアカデミーを始められてからは、サプリメンテーションにも変化が?
木澤 キャリアの面でも筋量は中々増えなくなってきたので、以前ほどは筋肉の材料を入れなくなっています。昨年くらいから朝、昼、晩に炭水化物をちょっと多めに摂り、つなぎはおにぎりがメインで時々プロテインと、バランスがだいぶ変わりました。今は1日のタンパク質量は体重×3gくらいの感覚ですね。
佐藤 栄養の摂取タイミングについてはいかがですか?
木澤 タンパク質に関しては、トレーニング前とトレーニング中をすごく大事にしています。やはりパフォーマンスをあげるべき時間や筋肉が一番ダメージを受ける時間に、いかにいいサプリメントを摂るのかが大切だと思います。炭水化物に関してはベストの状態でトレーニングを始めるために、前倒しで考えます。例えば、脚のトレーニングを夜にやるなら、前日の夜と当日の朝にしっかり炭水化物を摂取します。当日の昼だとちょっと遅いかなと感じます。エネルギーに転換するなら半日から1日前には摂っておきたいですね。
佐藤 トレーニング前に空腹になったりしませんか?
木澤 僕の場合、あえて空腹にしています。昔から食後にどうしても眠くなるので、空腹だとトレーニングのスイッチが入らないし、トレーニング中に摂取するサプリメントも、空腹だとより早く吸収されます。通常トレーニング開始3~4時間前には食事を終えて、お腹が空いてくる辺りでトレーニング前にプロテインを水で割って40gほど摂り、30分~1時間後にトレーニング開始、というのが理想です。
佐藤 低血糖のような状態になりそうですが。
木澤 全くならないですね。減量に入るとカーボをゼロにしますが、ドリンクの味が甘くなくなったなぁと感じる程度にしか体幹はありません。僕の中では、トレーニング中のエネルギーは貯蔵されているタンクの中から使われているイメージです。トレーニング中に中に入れたものはすぐに使われるのではなく使った分を補充しているイメージです。ですからゼロにしてもほぼ体感的には変わらないですね。
佐藤 トップの選手がいい意味で無駄が削ぎ落されてくるといいますが、木澤さんもまさにそうかもしれませんね。お話からは、ご自身の感覚や体感を大事にされていることも伝わってきます。
木澤 やっぱり最終的には肌感、つまり自分の感覚がきちんと把握できていることが最強だと思っているんです。データを取って「サプリの必要量は〇g」と決めるのもちろん方法の一つですが、全部吸収されるわけではないし、人間の身体ってそんな単純ではないので。ダイエットも何キロカロリー摂取しようが減量が進んでいればいいわけですしね。
佐藤 そこは私も全く同感です(笑)。エビデンスでいえば、タンパク質の量は体重×2gが最適。でも、トップの選手は×4gを摂ることが多いですよね。示し合わせているわけでもなく、それぞれの肌感で「ベストは4g」という、いわば”みんなの正解”にたどり着いている。エビデンスや情報も大事ですが、感覚との両建てで考えていくべきと僕も思います。話しを戻して、トレーニング中に摂っているものは?
木澤 空腹になりすぎないようペプチド、クエン酸、クレアチン、オフシーズンはカーボも入れます。ペプチド40gほどでしょうか。ワークアウトドリンクは水分補給ではなく栄養補給なので、セット感にちびちびと入れていき、最後の種目に入る前にボトルが空になっているのが理想ですね。
佐藤 鍛える部位によって飲み方を変えたりしますか?
木澤 とにかく決めた量を飲み切るのが大前提ですが、脚トレの時はあまり水分を取りたくないです。だから相当濃くして点滴のように入れています。逆に上半身は水分を多めにするなど、その時のトレーニング時間た内容によって水分量を変えて飲み切れるようにしています。水分量としては500~700mlくらいでしょうか。
佐藤 トレーニング後のプロテインはどれくらいですか?
木澤 実は僕は摂らないんですよね。トレーニング後は血流が筋肉に行ってるので、消化が遅いと感じます。そのタイミングでプロテインを飲むとお腹に溜まってしまう感覚があります。ですから血流がまた内蔵に戻ってくるまで無理にプロテインは飲みません。トレーニング後ある程度時間が経過すると急にお腹が空いてくるので、そこで初めてプロテインなどを摂ります。
佐藤 トレーニング直後の吸収効率が上がる、いわゆるゴールデンタイムにプロテインを摂るというのは半ば常識とされていますが。
木澤 それぞれの体質や体内環境の状況によるものではないでしょうか。セミナーなどで「夜のトレーニング後のプロテインがお腹にたまり、その後に食事を摂りたくても食べられない経験がありませんか?」と聞くと、参加者の半分近くが手を挙げたりするんですよ。
佐藤 なるほど、それは聞いてみたことがなかったですね。例えばアミノ酸やペプチドは吸収が早いので、胃への負担がかからず、消化機能が落ちていてもしっかり吸収できるのが特徴ですが、それに比べるとプロテインは吸収に時間がかかるんですよね。
木澤 一番欲しいときにプロテインといういい物を入れても、消化機能がダメージ受けて栄養を吸収しづらい人もいる。だったらお腹が空くまで待って、普通に食事から摂ったほうがいいというのが僕の考えです。僕の場合、トレーニング後に摂るのはEAAです。最後の種目が終わるまでにペプチドを飲み切り、終わったらEAAを15~20gほど入れます。プロテインと比べお腹に溜まらないんですね。
佐藤 EAAは吸収が早いですからね。空腹を感じた時は何を?
木澤 増量中はプロテインとカーボですね。減量中は、トレーニング後ではせっかく脂肪燃焼モードになっているのを止めたくないのでカーボは入れず、BCAAを入れてカタボリックを防ぎます。その後に、やはり筋肉を分解させないようBCAAをドリンクに溶かして飲んだりしています。
佐藤 BCAAはいつごろから摂っているのですか?
木澤 単体で摂るようになって15年くらいでしょうか。摂りだした当初から、筋量をキープしたままダイエットが進む実感がすごくありましたからね。昔に比べてサプリメントや食材で時代が変わったと感じるものは、BCAAと鶏胸肉ではないですかね。
佐藤 ひと昔前は、筋肉=ささみが常識でしたからね。木澤さんがEAAを選ぶときのポイントもぜひ教えてください。
木澤 一番は、やはり組成ですね。バランス、といっても決してマニアックなものではなくて、きちんと全部はいっているかを見ます。
佐藤 必須アミノ酸である9種類のアミノ酸が全て入っているかどうかという観点ですね。
木澤 あとは、BCAAの含有率が高かいかどうかも見ます。コスト的なことを考えたら、一般のトレーニーの方はBCAAを豊富に含むEAAだけでいいと思うし、減量中のワークアウトドリンクとしてもEAAだけで十分じゃないかと思います。もう一つ、やっぱり味は気にしますね。
佐藤 たしかに後味が悪いと不快感がありますよね。
木澤 あまりにまずいと、トレーニングを中断して歯磨きにいきますから。昔のアミノ酸はやばかったですね(笑)、今はかなり改良されてきましたよね。僕はドーピングの関係もあるので国産が基本。そうなると、品質も確かだしバランスもだいたい決まってくるので、結局は味や溶けやすさなどトレーニング中の飲みやすさ優先になりますよね。
佐藤 よく「EAAはプロテインやHMBより効果がすごいのか」など、他のサプリメントと比較されることも多いのですが、木澤さんの中でEAAはどういう位置づけですか?
木澤 例えば、このあとすぐ食事を摂りたいからプロテインより軽いEAAにしようかとか、トレーニング前にプロテインを摂るつもりが、時間がなくなって直前になってしまったからEAAにしようとか、選択の幅を広げてくれるもの。だからプロテインとEAA、どちらがいいのかということではなく、両方取り入れた方がより綿密に栄養摂取のスケジュールを組み立てやすいし、僕はそういうアイテムとしてとらえています。
佐藤 他のサプリメントにも言えますが、適材適所で使ってこそ効果を最大に実感できますしね。
木澤 体感でいえば、EAAは僕にとって点滴のようなイメージです。すごく栄養価が高いけど、迅速に吸収される。一方、ペプチドやプロテインはある程度時間が経ってから吸収される。「EAAだとバテてお腹が空いてしょうがない」というのも分かるし、そのぶん吸収が抜群に良いという大きなメリットがあるので、賢く使い分けていくことが大事だと思います。
佐藤 EAAを摂取したあとBCAAを摂るとのことですが、摂り方としてはトレーニング後、30分以降雄ですか?
木澤 そうです。ボトルなどに水で薄めておいて、次の栄耀摂取まで長く空く場合は20g程度を1時間あたり5gのイメージで摂っています。また減量末期になると、1日を通して薄めのBCAAを水分補給として摂ります。本当にBCAAが無い時代と今では全然違いますよね。減量が圧倒的に楽に進みますから。
佐藤 EAAとBCAAは体感的にどう違いますか。
木澤 EAAは栄養や筋肉の材料というイメージなので、プロテインやペプチドの仲間。それに対してBCAAはエネルギー源で、全く違うけれどあえて言うならカーボを入れないので、エネルギーを枯渇させないためにもBCAAを入れていく必要があると考えます。
佐藤 ヒトは基礎代謝を含めて常にエネルギーを消費しながら活動しているので、時間を追うごとにBCAAが不足することもある。この状態に陥ると、筋肉がエネルギー源として持っているBCAAを調達して使う為に、節分解が発生してしまいます。BCAAを外から補って栄養補給しておけば、脂肪燃焼モードにもなっているので、脂肪も燃えて筋肉も守れるということになりますね。理想としてはBCAAもEAAも摂りたいところですよね。
木澤 もちろんそうですが、EAAの中にもBCAAが入っているので、EAAを比べる時はBCAAの含有量も必ずチェックして、納得のいくものを摂っています。
佐藤 それにしても、木澤さんがトレーニング後にプロテインを摂らないというのは意外でした。いろいろ試行錯誤を繰り返し、今のサプリメンテーションにたどり着いたのでしょうね。
木澤 僕らってトレーニングにしても栄養補給にしても「今よりもっと、もっと」という気持ちで常にやるわけじゃないですか。そうであれば、もっと上にいけるんじゃないかとか、もっとプラスになるんじゃないかというものを試すのは当たり前のことなので。今日紹介したのは、あくまで僕のやり方で、合う、合わないは人それぞれだと思います。皆さんが実際にやってみて、こっちのほうがしっかり食事が摂れて、身体が作れるという方はやっていただいたらいいと思います。
佐藤 「トレーニング後はプロテイン」や「EAAはプロテインより優れている、劣っている」といった情報を鵜呑みにせず、本当に自分の身体に合っているか、効いているかというところまで考え、それぞれを吟味したうえで活用してほしいと私も思います。